国内FXと海外FXの違い「発注方式」
公開日:2024.12.19
更新日:2024.12.20
海外FXを利用する際、トレーダーが注文する方法は国内FXの場合と変わりません。
しかし、注文後の処理においては国内FXと海外FXで大きな違いがあります。
まずは国内FXについて見ていきましょう。
この記事の見出し
国内FXと海外FXでは注文後の発注方式が異なる
国内FX業者の多くは、**DD(Dealing Desk、ディーリングデスク)方式**という仕組みを採用しています。
このDD方式は、証券会社や銀行など金融機関の店頭取引で行われることから、「OTC(Over The Counter)」方式とも呼ばれています。
さらに、人を介して取引が行われるため、このような名称が付けられています。
国内FX業者の大半が採用するDD方式
DD方式の仕組みを簡単に説明します。
トレーダーが注文を出すと、その注文は業者内のディーリングデスクに送られます。
同時に多くのトレーダーから注文が出されるため、売りと買いを相殺して処理することもあります。
しかし、売りと買いが完全に一致することはほとんどありません。
そのため、差分については業者内部で処理されます。
この処理方法には以下のような特徴があります。
DD方式処理方法の特徴
- 負けやすいトレーダー**と判断された場合:
業者は実際に市場で取引をせず、そのトレーダーの損失がそのまま業者の利益になります。 - 勝ちやすいトレーダー**と判断された場合:
業者はインターバンク市場を利用してヘッジポジションを取り、損失リスクを回避します。
つまり、国内FX業者では、トレーダーの注文がインターバンク市場に流れることなく、業者内部で完結してしまう仕組みになっています。
ディーラーが介在することで操作の可能性も
DD方式ではディーラーが関与しているため、取引内容を操作する余地があります。
以下のような操作が行われることもあると言われています。
取引操作
- 価格操作:業者側の都合に合わせて価格を上下させる。
- ストップロス狩り:トレーダーの損切りポイントを狙った動き。
- 約定拒否やリクオート:注文が成立しないようにする。
- スリッページ:意図した価格とは異なる価格で約定させる。
また、自動売買やスキャルピングで継続的に利益を上げているトレーダーに対しては、口座凍結など厳しい対応が取られる場合もあります。
DD方式で利益を得る仕組み
DD方式を採用している業者の利益源はスプレッドだけではありません。
実際には、負けたトレーダーの損失分がそのまま業者の利益となります。
そのため、この仕組みでは極端な話、**トレーダーには勝ってほしくない**という構造になっていると言えます。
海外FX業者の大半がNDD方式を採用
国内FX業者の多くがDD方式を採用しているのに対し、海外FX業者の大半は**NDD(No Dealing Desk、ノーディーリングデスク)方式**という発注方式を使用しています。
NDD方式の特徴
NDD方式では、トレーダーの注文が自動的にLP(Liquidity Providers、流動性提供者)を通じてインターバンク市場に流れます。
この方式には以下のような特徴があります:
NDD方式の特徴
- **人の介入がない**ため、透明性が高く公平な取引が可能
- 業者の利益はスプレッドや手数料のみ
- 取引操作の必要性がない
- トレーダーの取引量が増えるほど業者の利益も増加
このため、NDD方式を採用する業者は、スキャルピングや自動売買を歓迎します。
これらの手法は取引回数を増やすため、業者にとっても有利だからです。
海外FX業者の約8割以上がこのNDD方式を採用していると言われています。
一方、国内でNDD方式を採用している業者はまだ少数派です。
NDD方式の2つのタイプ:ECN方式とSTP方式
NDD方式にはさらに「ECN方式」と「STP方式」という2つのタイプがあります。
ECN(Electronic Communications Network)方式
ECN方式は電子通信ネットワークを使用した取引方式です。
主な特徴は以下の通りです:
ECN方式の特徴
- 個人トレーダー、ファンド、FX業者、銀行など、様々な参加者の注文がマッチング
- **大口の取引参加者**が多いため、約定力が高い
- スプレッドは必ずしも最小ではなく、スリッページが発生する可能性あり
- リクオート(再見積もり)は発生しない
- **取引量に応じた手数料**を徴収
- 生スプレッドに手数料を上乗せしないため、透明性が高い
ECN方式のメリットは安定した取引が可能な点です。
ただし、初回入金額が高めに設定されていることが多いため、気軽に始めたい人にとってはデメリットになる可能性があります。
STP方式は少額取引に適している
STP方式を採用する海外FX業者は、カバー先の金融機関から提示されたレートにスプレッドを上乗せして、トレーダーに提示します。
**この方式では、カバー先からの提示レートとトレーダーへの提示レートの差が業者の利益**となります。
そのため、カバー先が多いほど有利なレート提供が可能となり、業者とトレーダー双方にメリットがあります。
STP方式の2つのタイプ
STP方式にはさらに2つの発注方法があります:
STP方式の発注方法
1. **Instant Execution(インスタントエクスキューション)**
– 「即時注文決済」を意味します
– トレーダーの注文を業者が直ちに受け取り(決済)ます
– 実際の取引は瞬時にカバー先の金融機関に流されます
2. **Market Execution(マーケットエクスキューション)**
– 業者を介さず、直接カバー先の金融機関に注文を出します
– リクオートは発生しませんが、スリッページの可能性があります
取引規模に応じた使い分け
Instant ExecutionとMarket Executionには、それぞれ長所と短所があります:
Instant Execution
- 少額取引(数千円〜数万円単位)に適している
- FX初心者でも利用しやすい
- -多くの海外FX業者が採用
Market Execution
- 大口取引(100万通貨単位以上)に適している
- 確実な注文決済が必要な場合に選ばれる
- -スプレッドと取引手数料の合計コストが低くなる傾向がある
取引規模に応じて適切な方式を選択することが重要です。
少額取引ならInstant Execution、大口取引ならMarket Executionを採用している業者を選ぶことで、より効率的な取引が可能になります。
トレーダーにとってはNDD方式の方がメリットが大きい
DD方式とNDD方式について詳しく見てきましたが、**トレーダーにとってはNDD方式の方が有利**だと言えます。
確かに、表面的なスペックだけを見ると、**固定的で低いスプレッド**を提供するDD方式の国内FX業者は魅力的に映るかもしれません。
しかし、注文後の処理の仕組みを理解すると、NDD方式の方がトレーダーにとって大きな利点があることが分かります。
NDD方式の主なメリットは以下の通りです:
NDD方式のリット
- 取引の透明性が高い
- 市場の実勢価格で取引できる
- 業者による取引操作のリスクが低い
- スキャルピングや自動売買が制限されにくい
- 大口取引でも有利な条件で取引できる可能性がある
一方、DD方式には以下のようなリスクがあります:
・業者による価格操作の可能性
・ストップロス狩りのリスク
・約定拒否やリクオートの可能性
・勝ち続けるトレーダーに対する制限措置のリスク
これらの点を考慮すると、長期的にはNDD方式を採用している業者を選ぶ方が、トレーダーにとって有利だと言えるでしょう。
特に、公平で透明性の高い取引環境を求める場合は、NDD方式の業者を選択することをおすすめします。