海外FXの法人口座で賢く節税
公開日:2024.12.16
更新日:2024.12.16
日本に住んでいる人が海外FXで稼いだお金も、日本の税金ルールに従って納めなければいけません。国内FXと海外FXでは税金の仕組みが違います。
国内FXは稼いだ金額に関係なく約20%の税金ですが、海外FXは稼ぐ金額が増えるほど税率も上がる「累進課税」で、10%から55%まで変わります。つまり、海外FXでたくさん稼ぐ人は税率も高くなり、税金の負担が大きくなります。
海外FXで税金を節約する方法はいくつかありますが、法人口座の開設も効果的な選択肢の一つです。個人口座から法人口座に切り替えると、経費として認められる範囲が広がったり、税金を抑えられたりするメリットがあります。
ただし、法人口座は誰にでも向いているわけではありません。海外FXでたくさん稼いでいる人には有利ですが、あまり稼いでいない人が法人口座を使うと、個人口座の時より税金が高くなることもあるので気をつけましょう。
この記事では、法人口座の良い点と悪い点、開設に必要な条件や手続きについて説明します。法人口座を上手に使って、賢く税金を節約しましょう。
この記事の見出し
法人口座開設のメリット
海外FXでは、国内FXとは違う税金のルールがあります。例えば、儲けと損失を相殺したり、損失を翌年に繰り越したりすることができません。
しかし、法人口座を開設すると、個人口座では認められなかった様々な利点が得られます。主なメリットには以下のようなものがあります。
- 経費として認められる範囲が広がる
- 儲けと損失を相殺できるようになる
これらのメリットは、結果的に税金を節約することにつながります。
節税対策
個人口座で海外FXをする場合、所得税を支払う必要があります。税率は稼いだ金額によって変わり、10%から55%の範囲で変動します。
一方、法人口座で海外FXをすると、所得税ではなく法人税が適用されます。資本金が1億円以下の中小法人の場合、税率は以下のようになります。
- 年間利益が800万円以下:15%
- 年間利益が800万円を超える:23.2%
法人口座を使うことで、個人口座よりも税率を抑えられる可能性があります。
海外FXで法人口座を持つことが税金面で有利になる収益の目安は、一概に言えません。これは、個人の状況によって大きく異なるからです。年間収益が800万円以上といった具体的な数字を示すのは難しいのです。
ただし、法人口座には経費として認められる範囲が広がるメリットがあります。このため、大きな利益を出していなくても、法人口座を持つ価値はあります。経費に関する詳しい説明は次の部分で紹介します。
経費の計上
法人口座を開設する大きな利点の二つ目は、経費として認められる範囲が広がることです。経費を利益から差し引くことで、税金がかかる金額自体を減らせるので、大きな節税効果があります。
法人口座では、個人口座で認められている経費に加えて、法人の役員報酬も経費として計上できます。個人口座で認められる経費には以下のようなものがあります。
- 海外FXセミナーの参加費
- セミナー参加に伴う宿泊費
- 関連書籍の代金
- サーバーの代金
例えば、次のような状況を考えてみましょう。
- 年間300万円の役員報酬を受け取る役員を3人置いた法人
- 海外FXで年間利益が300万円
この場合、課税対象額は以下のように計算されます。
300万円(年間利益)- 300万円(役員報酬)= 0円
結果として、法人の維持に必要な最低限のコストだけで済みます。
一方、個人口座で300万円の利益を出した場合、所得税と住民税を合わせて約20%の税金がかかります。
損益の合算が可能に
個人口座の場合、海外FXで得た所得は「雑所得」として扱われ、他の投資などの損益と合算できません。しかし、法人口座を開設すると、法人が行う他の事業の損益と合わせて税金を計算できるようになります。
例えば、A法人が海外FX以外に不動産業も行っているとして、ある年の損益が以下のようだったとします。
- 海外FX:1,000万円のプラス
- 不動産事業:500万円のマイナス
この場合、法人口座では課税対象額が500万円(1,000万円 – 500万円)になります。
一方、個人口座の場合、海外FXの所得は他の事業と合算できないため、課税対象額は1,000万円のままです。
結果として、法人口座と個人口座では課税対象額に500万円もの差が生じることになります。
法人口座開設のデメリット
ここからは、法人口座のマイナス面について見ていきます。法人口座は個人口座と違い、個人ではなく法人が管理することになるので、いくつかの制限が生じます。
設立と維持にコストがかかる
法人口座を開設するには、法人として登記する必要があり、そのための申請手続きが必要です。この過程では以下のようなコストが発生する可能性があります。
- 書類作成のコスト
- 専門家への依頼費用
書類を自分で作成できれば最小限のコストで済みますが、記入ミスがあると再提出が必要になります。専門家に頼むと、その分の費用がかかります。
また、法人口座を持つと毎年の確定申告が必要になります。これには以下のような作業が含まれます。
- 法人税の計算
- 決算書類の作成
- その他の法人関連の税務作業
これらの作業は素人には難しいため、税理士などの専門家に依頼することが多く、その場合は毎年費用が発生します。
利益を自由に使うことはできない
法人口座の利益は、個人ではなく法人のものになります。これは見落としがちな重要なポイントです。個人事業主として海外FXを行う場合とは異なり、法人口座の利益は自由に使えません。
つまり、法人から個人へのお金の流れは、決められた役員報酬という形でのみ可能になります。
一例
- 社長であっても、利益を自由に引き出すことはできない
- あらかじめ決めた役員報酬の範囲内でしか、法人から個人へお金を移せない
損益がマイナスでも税金を支払う必要がある
法人口座で海外FXを行うと、個人口座では必要なかった地方税を納める必要があります。この地方税には以下のような特徴があります。
- 毎年固定で課税される
- 損益に関係なく支払う必要がある
地方税の金額は、法人の資本金によって異なります。
資本金 | 地方税額 |
---|---|
1,000万円以下 | 7万円 |
1,000万円超 | 18万円 |
この地方税は、年間の損益がマイナスであっても課税されるので注意が必要です。つまり、海外FXで利益が出なかった年でも、この税金は支払わなければなりません。
法人口座の開設方法
海外FXの法人口座で節税対策を行う際、以下の点に注意が必要です。
海外FX業者での口座開設の手続き
法人口座は全ての海外FX業者で開設できるわけではありません。法人口座に対応している業者でのみ開設が可能です。
必要な書類は個人口座とは異なり、以下のようなものが求められます。
- 法人確認書類(会社の登記簿謄本、歴事項全部証明書、設立定款など)
- 法人住所確認書類(法人住所が記載された公共料金の請求書など)
- 役員の身分証明書(運転免許証、パスポート、マイナンバーカードなど)
- 役員の現住所証明書(公共料金の明細書/請求書、銀行利用明細書など)
場合によっては、追加書類の提出が必要になることもあります。
必要な書類や手続き方法の詳細は、法人口座の開設を検討している海外FX業者や専門家に必ず確認しましょう。
まとめ
海外FXで法人口座を開設することには、大きなメリットがあります。
- 大きく稼いでいるトレーダーにとって、個人口座よりも税率が低い
- あまり稼いでいないトレーダーでも、経費として認められる範囲が広がり、課税対象額を抑えられる
これらの利点により、結果的に納める税金の額を少なくすることができます。
ただし、以下の点に注意が必要です。
- 法人設立のためのコストがかかる
- 法人を維持するためのコストがかかる
海外FXである程度の所得があるトレーダーは、法人口座の開設を検討してみるのもよいでしょう。法人口座を上手に活用すれば、税金を抑えて手元に残る資金を増やすことができます。